日がな一日主婦の趣味ブログ

本と映画とエトセトラ

小説

2023年12月 最近読んだ本まとめ

最近と言っても1~2ヶ月ほど前に読んだものを今更ながら所感の書き起こし。 オーラの発表会|綿矢りさ 作家は好きなのだけれど、この話はあんまり好きくなかった・・・! 主人公の海松子は他人に自分だけのあだ名をつける癖がある、との設定を見ててっきりシ…

夏目漱石『こころ』 ――人生の終わりを考える

ツクツクボウシの鳴き声が聞こえたり、トンボが飛んでいるのを見ると、秋の訪れを感じます。 今年の夏もなんとか乗り切れました。去年の今頃、ムスコはようやくヨチヨチしだした頃だったので、家に籠もることが多かった(と思う)のですが、 2歳児はほんと元…

コンビニ人間 ――社会適応能力があるのは

なんとこの作品 まともなやつが一人たりとて出て来ない。 まずはあらすじ。 30代後半になってもコンビニアルバイトしか経験のない主人公が、周りから「やいのやいの」言われるのが嫌になっていたので、「なんとかせな!」と、旧友とバーベキューしてみたり、…

アルジャーノンに花束を ――意識下・無意識下の自我

読後感がひっじょーーーに濃厚な一冊でした。当然最後の一文には泣かされました。 おかげでブログはおろか、外に出ても家のことしてても気がそぞろの日々。 「自分」ってなんなのだろうか きっとこの本を読まれた方は大なり小なり考えさせられたのではないで…

フラニーとゾーイー続き ――神の存在について考える――

続きましてゾーイー編に参ります。 こちらの作品の一番おもしろいところは、語り部がグラース家次男のバディであること。 (『フラニー』はただの三人称スタイルです) 設定としては作家であるバディが自身の家族の物語を散文形式で書いてみました、というて…

フラニーとゾーイー ――エゴと信仰――

皆さんは「信仰」というものを考えてみたことはありますか? (いかがわしさの否めない出だし) 神様を信じるってこと?神様に祈りを捧げること? そもそも、神って誰?なに? 祈るってどういうこと? 無宗教の多い私達日本人にはピンときにくい記事かもしれ…

これは、夢と希望のものがたり(ただの○ソ)――。

重松清作の「とんび」を読んでいたが、挫折した。 手に取った(古本サイトでポチった)のは「父と子の絆」という昨今なかなか聞かない題材に惹かれたのがきっかけだった。 ヤスさんの息子アキラの物心つかないうちに、母親である美佐子が亡くなってしまう。…

ライ麦畑でつかまえて ―人には勧められない不朽の名作

私がこの作品を超名作と評していながらも、人にはおすすめできない理由。 そのひとつは主人公ホールデン・コールフィールドがどうやっても救われない物語だから。 病気や事故で死んじゃうとかそんな安っぽいオチではありませんよ。いわばこれは人間に産まれ…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―テディ―

これまでの作品では「ごくごくありふれた一般人の物語」だったわけだが、ここにきて急にテイストが変わる。 これはある種「人生における回答」をサリンジャーなりに明示したものなのかもしれない。 というわけで以下本題へ。 テディって何者? キリスト教と…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―ド・ドーミエ=スミスの青の時代―

今回少し長くなりました。お時間あればお読みくださいませ。 同著者の「ライ麦畑でつかまえて」と似通った作風ですが、こちらは「若気の至り」としての毛色が強いかな。 この物語の語り部は、26,7歳の大人になったド・ドーミエ=スミス(以下スミス)が 養父…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―愛らしき口もと目は緑―

後にも先にも登場人物が大人のみなのはこの作品だけかな。不倫関係を軸とした男女の三角関係のお話です。 とういうわけで以下本題へ。 主人公と一緒にいる女性は? 女性特有の頭脳の良さ なぜアーサーは「目は緑」という詩にしたのか 最後のアーサーはどうな…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―エズミに捧ぐ〈愛と汚辱のうちに〉―

エズミに捧ぐは話のメリハリ(というか落差?)がしっかりしていて、なによりここまで読み進めてくるとなんとなくサリンジャーの傾向も掴めてくる分、読みやすく感じました(あくまでなんとなくですけどね) 愛と心の傷 さいごに 愛と心の傷 ノルマンディー…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―小舟のほとりで―

ようやくナイン・ストーリーズも折り返しです。今回は文量としてもだいぶ短めで、さらりと読めますよ。 ただ、さらりとしている分、解釈をアウトプットするのにめちゃくちゃ骨が折れました。 というわけで以下考察と感想です。 小舟のほとりとは? 子どもの…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―笑い男―

攻殻機動隊でもおなじみ笑い男。 すっごいメタファーだらけだよ~~といろんな記事で読んだ通り、一回読んだだけはほんっとに意味がわかりません。 このお話は男女の恋愛と別れを描いたものですが、ほとんどを団長の創作ストーリー「笑い男」が締めています…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―バナナフィッシュにうってつけの日―

順番前後しまして、サリンジャーの代表作のひとつともいえるバナナフィッシュにうってつけの日。私がサリンジャーを初めて知ったのもアニメ作品「BANANA FISH」(原作は漫画)を観たときでした。もうだいぶ前なのに時たまアッシュのことを思い出しては、胸が…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―対エスキモー戦争の前夜―

この作品の一番の謎は、終盤のジニーの心変わり。その理由に関して深読みするものでもないのか、それとも凝ったメッセージがあるのか・・・。簡単なようで難しかったですが、脳みそフル回転で考察していきたいと思います。 タイトルの意味 死んでしまったヒ…

【感想・考察】ナイン・ストーリーズ ―コネティカットのひょこひょこおじさん―

数年前アニメ作品でサリンジャーを知り、気にはなっていましたが、なんやかんや後回しに。ようやくアラサーになったこのタイミングで読むことができました 逆にこのタイミングで読めて良かったかもしれません。 当時の人生経験皆無のおこちゃまだった自分が…