読後感がひっじょーーーに濃厚な一冊でした。当然最後の一文には泣かされました。
おかげでブログはおろか、外に出ても家のことしてても気がそぞろの日々。
「自分」ってなんなのだろうか
きっとこの本を読まれた方は大なり小なり考えさせられたのではないでしょうか。
まずはあらすじです。
IQ70しか持たないチャーリイ・ゴードン。研究の一環で彼は脳手術を受けることになり、IQ150まで知能が飛躍するお話です。
アルジャーノンはチャーリイに先行してIQ飛躍の手術を受けていたネズミで、二人は実験仲間とでもいいましょうか。正直上手く言い表せない関係性なのですが。
文体がとても特徴的で、チャーリイ目線の報告書形式で書かれています。
最初は誤字脱字だらけの文章なのが、手術を受けたあとからどんどん文章力が進化していく(これに関しては翻訳者の方に脱帽)
IQ70だったチャーリイは知能を得て、当時の自分の社会的立ち位置を知り、愕然とします。IQ70では虐げられていることすら理解できていないんです。「笑われている」のが嘲笑なのか喜びなのかの区別すらできない。知ったほうが幸せだったのか、知らないほうが幸せだったのかなんとも言えません。
チャーリイが手術を受けた理由はほんとにシンプルで
「頭がよくなれば、もっと仲間と親密になれる」と思ったからというだけなのに現実はそんな優しい世界ではなかった。
突然頭の良くなったチャーリイに対し、仕事仲間たちは畏れ、気持ち悪がり、楽しく話せるどころか、遠のいていってしまうことに(知能上昇が急激だった上に手術のことは口止めされていましたからね)
しかしながら勉強熱心なチャーリイは最終的に自分を手術した研究者たちの知能すら追い越してしまいます。これが自然とチャーリイ自身に高慢さを生むことになり、さらに人との壁を作ってしまう。
こんな感じで進んでいくので、最後が本当に切ない。こんな切ないことがあってたまるかってぐらい切ない。
さて、このように「知的障がい者の人権」や「科学・技術革新への過信に対する警告」的視点など興味深いテーマがいくつも転がっているのですが、私は意識下の自我と無意識下の自我についての問がすごく心に刺さりました。
いや、むしろ脳みそを直接ぶん殴られた感じと言ってもいいかもしれません。
何が言いたいかといいますと、IQ70のチャーリイとIQ150のチャーリイって別人なんです。手術によって上書きされたわけではなく、無意識下にIQ70のチャーリイが存在している。
これがねえ・・・・・
すごいなあと思いまして(文章力乙)
これは私達にも言えることだと思うんですよ。
意識と無意識は私達にも存在している。
これは過去と未来にも置き換えられるかもしれません。
今意識している自分とは違う自分。それは「過去」との因果関係にありなんですよ。
過去(無意識)の自分なくして今の自分(意識)、はたまた未来の自分はない。
私達は徐々に成長していくので、意識と無意識は干渉しあわないようになる(というか無意識なので意識していない)
過去の自分が今の自分を苦しめることもあるかもしれませんが、その時々で上手く調和させてきていたのですね。
これは自己肯定感ともいうのかなあ。
チャーリイは急激な成長をしたため、分裂症状が起こってしまった。
時たま無意識が意識に強烈に干渉してしまう(ここの描写が結構ホラー味)
チャーリイは「自分がなんなのか」すごく悩みます。
IQ70のチャーリイがいるのならば、自分の存在意義とは?そもそも自分は誰なのだ?と。
ここで気づいたのが、私自身にもこれは当てはまる。
幼いころの自分は「自分」と言えるのか。見た目も違えば考え方、行動も違う。それは果たして「自分」なのだろうか。
攻殻機動隊の世界がまさにこれ。全身義体、究極ヒト形でなくても生きていける世界で、自分とはなんのことを指すのか。
IQ70のチャーリイが渇望していたのは「愛」それに付随する「承認欲求」
頭が良くなって昔自分を捨てたお母さんやお父さんに認められたい、妹にも頼りがいのある兄でいたい。
しかし、IQ150になったチャーリイは昔の面影すらも消えてしまっていて、父親に会いに行っても気づかれることはありませんでした。このシーンがすごく印象的で、チャーリイは最後まで自ら名乗ることはしなかったんですね。
そう、認めてほしい自分は自分だけれど自分じゃない。相手に気づいてもらって初めて成立するんですよね、今のチャーリイもチャーリイなのだと。
就職活動のときに「あなたはどんな人ですか」みたいな質問とかあるじゃないですか。
当時就活生だった私も(自分が一番知りたいです)って思ってましたし、逆に試験官に聞きたかった。
どんな人間に見えますか?と
どんな人間かなんて自分が一番わからないんですよ。
企業側はそういう禅問答を期待してるわけではないにしても、純粋な学生は考えてしまうよね。
こんな感じで全然整理しきれてないのですが、とにかくチャーリイが泣かせるんですよ、彼の他にも読んでてかわいそうなひとだらけだし。
これ以上考え過ぎるとこちらが心の病になりそうなので、今は「適度に忘れる」ようにしていっているところです。
次はもうちょいライトに読めるやつを読もう・・・。