日がな一日主婦の趣味ブログ

本と映画とエトセトラ

コンビニ人間 ――社会適応能力があるのは

なんとこの作品

 

まともなやつが一人たりとて出て来ない。

 

 

 

まずはあらすじ。

30代後半になってもコンビニアルバイトしか経験のない主人公が、周りから「やいのやいの」言われるのが嫌になっていたので、「なんとかせな!」と、旧友とバーベキューしてみたり、妹にアドバイスを請うてみたり、ストーキング癖のあるソシオパス(又の名を妖怪バスタブ男)と婚約するなどしてみるお話である。

 

主人公は全くと言っていいほど人間味がなく、コンビニ内での出来事も品出しや発注のことや従業員は誰々さんが入ってて~この間誰々さんが辞めて~とかそんなことばかり。感情面の起伏が全くといっていいほど無い。まじで、無い。

私は登場人物と同調しながら小説を読みたいタイプ(映画なんかも同様ですが)だからか、彼女の考えていることを拾い上げるのに難航しました。結局よくわからなかったですけど。一人称視点なのと微サイコパスチックな描写が余計ややこしくしているような。

人と違う考えを持っていることはわかるのだけど、その源流なるものがなんなのかわからない。

しかも主人公は普通の人じゃないのか、と思ってたら読み進めるにつれてそんなこともなさそうな気がしてくる。

だって仕事中の言動が至極まともなんだもの。

勤務時間より早めに来るし、レジ打ちだけでなくて発注もできるし、品出しの要領も完璧で、後輩指導もできて・・・。

 

あれ?これなにが悪いんだ?と。

実行するまでの思考プロセスやプライベートでの言動は、どうでもいいというか、私だったら仕事がデキる同僚ないし先輩がいるのはアタリ職場だけどなあ。むしろ変な考え方も愛嬌に感じそうだけど。

 

なんなら銀魂1話の新八みてごらんよ。レジすらまともに打てなくて店長にボロクソ怒られてたよ?

 

更に言うなら、ここまでマニュアルに対して完璧に動いてくれる人間はどこの会社も喉から手が出るほどほしいんじゃないのかな?

 

普通に凄いでしょ、主人公。まさに現代人の鏡。

 

 

いやむしろ

彼女のまわりの人間のほうが「はみ出しもの」な感じがする。

 

 

仕事そっちのけで、他人の同棲事情に首突っ込もうとする店長や同僚、壊れかけのRadioのように縄文がどうだムラがどうだと喚き散らす婚約者(元同僚)、「いつまでバイトしてるの?」「結婚は?子どもは?」ばっかりの旧友とその旦那達。

(もう放っといてあげなよ……)って思ったし、シンプルに失礼なのよ。

 

女性へのセクハラをここまで煮詰めなくても良くないか?

しかも、物語最後に主人公が「私達って子どもつくったほうがいいですか?」みたいな質問を、ほぼ顔見知り程度の人間に投げかけたシーンで、セクハラが煮詰まりすぎて焦げ付いたよね。

 

呪霊かなんかなのか?この人達は。

ここで作者の怨念的なものを感じましたよ、わたしゃ。

 

ゆえに、皮肉にも一番社会に馴染めているのが、自身のことを「はみ出しもの」と感じている主人公で、あっち側の「普通」と言われる人達が全然普通ではないという。

ある種のどんでん返し(「普通」というのを揶揄ってる?)を見せたかったのかなあとも思ったり思わなかったり。

 

話の締め方は個人的にはハッピーエンドだと思っています。情景を思い浮かべるとただただドン引きますけど。

ここはタイトルの伏線が回収されるシーンにもなっているんですが、早い話が「前向きで明るいフライング・ダッチマン*1」みたいなもんですね。彼女、最終的にコンビニと一体化しだすんじゃないだろうか。

 

 

作品を通して言いたいことはわかるんですけど、とにもかくにも登場人物のキャラが濃ゆかったなあ・・・・・・。