後にも先にも登場人物が大人のみなのはこの作品だけかな。不倫関係を軸とした男女の三角関係のお話です。
とういうわけで以下本題へ。
主人公と一緒にいる女性は?
主人公リーと、妻に浮気されているんじゃないかと動揺して夜更けに電話をかけてくるアーサー。そのリーのそばには女性の姿が。
この妻とリーの傍らにいる女性、イコールだと作中で明言はないものの
二人の話す(感じる)女性の特徴
色は紫と見まごうほどの深い青だ。
(リーのモノローグより)
海の貝殻みたいな目だよ、あいつのは
(アーサーのセリフより)
電話を置いた後のリーに対する女の言葉
「あなたはすばらしかったわ。まさに天晴れだったわよ」
これらのことから、リーと一緒にいる女=アーサーの妻ジョーニーである、と断定して話を進めます。
女性特有の頭脳の良さ
一概に女性のみ、とも言えないかもしれませんが、「女」というのは男性が思っているより計算高いものです。
バカそうにみえることがあってもそれも計算のうち。「この人はこれをすれば喜ぶわ」とか「なんかあっても泣いときゃ許してくれるわ」とか意外と考えて行動してるもんです。
このしたたかさが男性を惑わすんですよねえ。
しかしこれをうまーく使いこなせる女性は家庭に入っても仕事してもやり手です。
この作品のジョーニーはまさにそういう女。
男漁りが激しいとわかっていても手放せない。人として信じられないけど、妻としてはできた女だと思わせるだけの器量がございます。
これがアーサーを苦しめてるんですけどね。
おれももうあいつを愛しちゃいないけどね。いや、どうかな。愛してもいるし愛してなくもある。変わるんだよ。(略)今度こそ決着をつけようと腹をきめていると、決まったように何かのわけができて、あいつといっしょに外で夕食ということになるんだ
これをみるにたぶんアーサーはジョーニーの手のひらの上をコロコロ転がされてしまっているのだろうな・・・。
他場面でも「ジョーニー、あなたわかってこういう行動とってるね?」って場面がチラホラあるんですよ。
詳細は省きますけども。
この男性ふたりもジョーニーの頭がいいのか悪いのかで、議論を交わしますが、
まあ、ジョーニーに惑わされてる二人なので議論は平行線。
個人の見解を述べさせてもらうと、不倫に関しては頭脳が悪いと言わざる得ません。が、それを成り立たせるための掌握術に関しては頭脳が良いと言えるかな。
(結局どっちも正解)
なぜアーサーは「目は緑」という詩にしたのか
二人でデートし始めたころに、おれがあいつに書いて送った誌のことを、ふと考えたりしちまうんだよ。『肌白く薔薇色の頬。愛らしき口もと目は緑』
先述したようにジョーニーの目は緑ではなく青色です。
調べてみますと、緑の目は世界的に見ても珍しく魅力的とされているみたいですよ。
デートし始めにこの詩を送ったとのことですが、この頃が一番楽しくて相手も魅力的に映る時期。
蓋を開けたらこんなビッ○(おっと失礼)だっとは、アーサーの心中察するにあまりあります。
最後のアーサーはどうなってしまったのか
先述の通り、
リーと一緒にいる女=アーサーの妻ジョーニーであるとすると最後アーサーのもとにジョーニーがいるのは完全なる矛盾ですね。
これは二通り意味がとれると思っていて
①長年に渡るジョーニーの不倫がアーサーの精神状態に異常をきたしてしまった
②アーサーはすでにヘベレケだったのでまともな行動がとれずデタラメな電話をした(次の日には忘れちゃってるってやつです)
個人的には②の説を推します。
アーサーは電話中ずっと平静状態と酩酊状態を行ったり来たりしてるんですね。急に声を荒らげたかと思ったら、「ほんとに起こしてないのかい?」と急に下手に出たり。
いつ変な方向へ転がりだすか、危うい状況だったわけです。
で、結局「リーのところへ行きたい」という申し出を断られ、一人になり、一気に酒が回りだした、とかそんな感じじゃないでしょうかね。
(私もあります、こういうこと)
あとは「尻軽女に負けないでほしい」というアーサーに対する期待もちょこっと込めて。
さいごに
この記事では主にジョーニーに焦点を当てましたが、リーやアーサーも掘ればいろいろ出てきそうだ。
男女の間柄は白黒つけれるほど単純じゃありませんからねぇ・・・。
でも長くなりすぎるので割愛・・・(汗)そしてわたしには文を纏める力が(以下略)
また、これ解釈の幅がめちゃくちゃ広い。いろんなパターンがありえます。
正直今回の記事を正解と捉えるのは違いますので参考程度で。
ただの会話劇でここまでキャラクターを深掘りできるサリンジャーの文才に脱帽(n回目)ですね。
では、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。